下地 健治 氏 下地 健治 氏

─ 相続支援を始めたきっかけ

  当社は団塊の世代のオーナーが多いので、世代交代した時に管理が離れていく恐れがあります。そのため、オーナーの家族、あるいは相続人と関わるということが大事だとは思いますがその糸口がない。実際にオーナーの資産が全く管理されていないという部分があって、管理物件のオーナーが別のところで資産を持っていて、そこを建築メーカーに取られてしまい、アパートを作るということになって…。分からない所で話が進んでおり、他社に管理・建築を持っていかれる痛い思いもしました。こうした事態を防ぐにはオーナーの資産全体を把握すること。そのためには相続が切り口になるというのが大きかったですね。
 そんな折、日管協の相続支援コンサルタント制度があると聞いて、すぐに飛びつきました。これしかないと。まさに当社の課題とするところだなと。これは自分がやるしかないと思いました。
 当社の売買スタッフが、エリアにチラシを配布しますが、その中に「相続の相談承ります」みたいなメッセージを載せたので、もっともっと勉強しないといけないと思い、自分を追い込みました。今思えば一歩踏み出すきっかけとなり、非常に良かったと思います。新たに多くの課題が見えてきて、それに対して、税理士・司法書士の先生に聞きながら勉強しています。

─ 賃貸住宅管理会社だからできること

  あるオーナーの進行中の事例ですが、父親から相続した時に、2億円の相続税が発生して、土地を切り売りして払った方がいらっしゃいます。ほとんど市内の畑なのですが、農地の特例を受けて、20年間動かせないような土地でした。オーナーもご高齢になり、心配になってきたのでしょうか、私が相続の話を持ちかけていくと、すぐ腰を上げて、いろいろ相談に乗ってくださいと話がありました。相続税の簡易シミュレーションを税理士と行ったところ、相続税が5,800万円程かかる試算になりました。オーナーご本人は父親の時に相当相続税がかかっていたので、もっとかかると思っていたようです。いろいろ試算しながら、これからどのように財産を圧縮していくか話し合いを行い、細かい話は割愛しますが、住宅兼アパートを区分して、区分登記したり、贈与したりと、財産を圧縮していくための方法を取ろうということになりました。また、残っている農地も20年の期限が切れるので、そこに賃貸戸建を建てて、さらに資産を圧縮していこうと。
 相続税が3,000万円近く圧縮できるので、オーナーも驚き、非常に喜んでいただきました。この提案は無償で行っていますが費用を取ってとも良いと言われました。父親の相続時には税理士に対応してもらったが、全くそういう提案がなかったそうです。このように信頼関係を築くことにより、次の世代の管理も離れていかない。我々の存在価値はここにあると感じました。

─ 今後の展開

  セミナーを実施すると、当社のオーナーに限らず、自主管理されているオーナー等の参加もあり、反応は良かったです。オーナーが抱えていた問題が分かるようになり、別日の個別相談会にもつながりました。お客様から必要とされる不動産会社を目指しているので、こういうことで少しずつ出来ているのかなという感じがあります。
 私以外の社員にも相続支援コンサルタント講習を受けてもらったのですが、それ以外の社員も相続に興味を持つようになって、是非自分も受けたいという話も出て、雰囲気はよくなっています。今後は不動産管理だけでなく、資産管理まで対応できるよう、会社全体として意識してオーナーさんに話をしています。
 今後の課題としては、相続からビジネスに結びつけていくメニューを作っていかないといけない。ただ、そのためには、もう少し経験を積まないといけないと思っています。今は、相続の相談から売買仲介やアパートの建築等の結果しか出ていません。将来的には、不動産会社が相続までできるということをしっかりと認知してもらって、なぜ不動産会社が相続支援をするのかを伝えていき、地域に支持される会社にならないといけません。

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