大久保 始代 氏 大久保 始代 氏

─ 相続支援を始めたきっかけ

  私どもは創業して35年になります。相続支援を始めたきっかけは、多くのオーナーの案件を扱う中で、相続が発生した時に不動産業者として、より適切なアドバイスをしていけるよう取り組んだのがきっかけです。
 特に当社の世田谷エリアで相続に詳しい方が少ないと感じています。地域の中で危機感を持っている業者や士業の方もいるかと思いますが、お客様に一番近い不動産業者が向き合っていけるかどうか、ということに気づいている方が少ないと思います。そんな中、日管協の相続支援の取り組みにとても感銘を受けました。

─ 節税だけが相続対策ではない

  セミナーをやる時には、まず世田谷にご縁があるということ、いま相続になるとどうなるかということからお話します。人間関係のところが一番難しく、例えば女性の立場だとこうなるなど、事例を交えて節税に固執せずにバランスの取れた対策が重要だとお話しています。相続の財産がほとんど土地・建物ということもあり、地元に長くいる不動産業者だからこそ、提案できると思っています。
 参加される方には、興味を持っていただき、熱心に質問をされる方もいらっしゃいます。規模の大きいセミナーより、地元で個別にやる方がいいかなと感じています。ひとりひとりのお顔を見ながら話をしていく方がその後につながります。

─ 相続が発生する前に

  オーナーの多くは、自分が亡くなった後はどうでもいいと言われます。相続というのは、相続が発生してから始まる、亡くなってから始まると思っている方が多いですが、実はそうではなく、ご自分が病気になって、先が見えた時に始まってしまいます。子供たちが、貯金の話などしている姿を病室で目の当たりにすることもあります。ひどい場合には病室で喧嘩になったり、勝手に自分の大事にしていたものを処分されたり、ということが起こる可能性もあります。そうなってからでは遅い。そのためには、まず相続が亡くなった後から始まるという認識を払拭しなければなりません。もともと仲の良かった兄弟が、隣同士に住んでいるのに一言も口をきかなくなったなどが現実にいくつも起こっているということを認識してもらって、財産をきちんと整理していくことが大事だということを多くの方に理解していただきたいですね。

─ ホスピタリティの世界

  私自身の気持ちはだいぶ変わりました。会社のためというよりも、その方たちのために何ができるかと意識できるようになりました。
 相続支援コンサルタントは色々な方々と連携を取ってプロジェクトを組みます。人間関係もそうですが、細かな配慮が必要です。データ集めから、後の人間関係がどうなるかまで神経を使います。
 楽しんでやっているというと失礼ですが、素直な気持ちで考えていくと、こことここがあって、こことこことはこうなのですと、パチッとパズルがはまるところが必ずあるので、それが分かるとお客様のためになりますし、パズルがはまるように探求し、節税のためだけでなく、人間関係を含め考えていく。そこがうまくいかないと揉めることもあります。コンサルティングというのはそういうものだと感じます。コンサルティングはサービスではなくて、ホスピタリティの世界だと思いますので、その方に一番あった、将来を見据えた対策を思いやりをもって考えていきたいと思います。

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